スペイン風オムレツ(トルティーヤ):料理学校の理想と下町の現実の間で
一見シンプルですが、完璧に仕上げるのが最も難しい料理の一つです
「トルティーヤ・デ・パタタス」は一見シンプルですが、完璧に仕上げるのが最も難しい料理の一つです。理論上は、じゃがいも、卵、オリーブオイル、塩の4つだけ。そこに「玉ねぎを入れるか否か」という論争がありますが、ここセナリス(Señarís)では、玉ねぎがもたらす「鮮やかな甘み」を大切にしています。しかし、何よりも重要なのは技術、そして「厨房の現実」です。
理想のトルティーヤ:料理学校で学んだこと
1. 理論と現実のギャップ
私が料理学校で学んだ「至高のトルティーヤ」が存在します。その完璧さを追求するには、時間は妥協できません。じゃがいもは0.3〜0.5cmの厚さに均一に切り、オイルの温度は厳密に80〜90度に保たなければなりません。
この温度で時間をかけて「コンフィ(低温調理)」することで、じゃがいもの澱粉が自然な甘みに変わります。玉ねぎも同じリズムで火を通せば、完璧な調和が生まれます。しかし正直に言いましょう。下町のバーの忙しい時間帯に、それだけの忍耐を貫くのは至難の業です。
塩の秘密(すべての塩が同じではない)
2. 塩の品質が決定的
「塩なんてどれも同じだ」と思っているなら、それは大きな間違いです。トルティーヤにおいて、塩はすべてを決めます。私は、塩化ナトリウム99%の精製塩は使いません。あれは血圧を上げるだけで、風味を壊します。
私たちの厨房では、自然乾燥させた粗挽きの天日海塩を使っています。この塩には17〜18種類のミネラルが含まれており、料理に深みと「大地の力」を与えてくれます。塩について詳しい記事を書きましたが、良いトルティーヤを作るなら、天然の塩こそが鍵です。
セナリスの日常:アントニオと厨房の戦い
3. 私たちの店の現実
それが理論です。そして、ここサンティアゴ・デ・コンポステーラの私たちの店の現実があります。私たちは機械ではありません。アントニオは毎朝、コーヒーを淹れ、ビールを注ぐ合間に、手作業でじゃがいもを剥き、切り続けています。数日前から切り置きしたじゃがいもなど使いません。
注文が入ると、私(スサナ)が厨房に入ります。お客様はお腹を空かせて待っています。低温で1時間も待たせるわけにはいきません。だから私は温度計を捨て、オイルを120〜150度に上げて調理を早めます。学校の理論を少し犠牲にするか、お客様を待たせすぎるか。そのバランスの狭間で戦っています。日によって少し火が通り過ぎたり、逆にトロトロだったりすることもありますが、それが「人間が作る料理」の真実です。
卵の真実:規制と誠実さ
4. 私たちが使う卵について
卵についてお話ししましょう。私は村で育ちました。庭を駆け回り、地面を突ついて育った鶏の卵に勝るものはないと知っています。50年の人生で、村の卵が腐っているのを見たことがありません。しかし、現在の法律では、レストランで「ラベルのない村の卵」を使うことは禁じられています。
そして、経営の現実もあります。サンティアゴで最も手頃な価格でトルティーヤを提供しながら、最高級の放し飼い卵を使えば、明日には店を畳まなければなりません。セナリスでは正直に言います。私たちはスーパーで売っている標準的な卵を使っています。それが、誠実な価格を守り、店を続けていく唯一の道だからです。
レシピ:セナリス流「ありのまま」のトルティーヤ
細かいグラム数や学校の気取った理屈は抜きです。私が実際に作っているやり方をお教えします。
材料
- じゃがいも 1kg:(皮を剥くと800gほどになりますが、スーパーでは皮の分まで払わされますよね)
- 卵(中サイズ)12個:予算の許す範囲で。
- 塩 10g:できれば天然の粗塩を。
- エキストラバージンオリーブオイル 1L:コンフィ用。
- 玉ねぎ 半分:お好みで(セナリスでは必須です)。
作り方
ステップ1:下準備
じゃがいもを0.3〜0.5cmの厚さに切り、水で軽く洗って表面の澱粉を落とします。これでコンフィの時にくっつくのを防げます。玉ねぎは千切りにします。
ステップ2:効率的なコンフィ
鍋にじゃがいもと玉ねぎを入れ、塩をひとつまみ加えます(これで調理が早まります)。そこにオイルを注ぎます。ガス代も馬鹿になりませんから、効率が大事です。
火加減:最初は中強火。中心から気泡が出てきたら弱火にします。約20分、ゆっくりと泡立てることで、野菜の自然な甘みが引き出されます。
ステップ3:休ませる工程(最大の秘訣)
野菜を揚げている間に、ボウルで卵を溶いておきます。野菜が柔らかくなったら、油をよく切り、少し冷まします。
プロの助言:熱々のまま卵に入れると、卵がすぐに固まってしまい、塩味が中まで入りません。人肌程度に冷めてから、優しく混ぜてください。じゃがいもが卵の中で「泳いでいる」状態が理想です。
ステップ4:味の確認
残りの塩を加えます。粗塩の場合は溶けるまで少し待ち、優しく混ぜます。
コツ:卵の色が少し濃く、均一になったら味見をしてください。焼く前の状態で、少し塩気が強く感じるくらいがベストです。
ステップ5:焼き上げ
フライパンを熱します。テフロン加工の場合は、コーティングの耐久性と調理の純度を保つため、過度な加熱を避けてください。少量のひまわり油(直火による焼き付けに適しています)を馴染ませ、余分な油は捨てます。
- 中火で流し込み、かき混ぜずに待ちます。
- 半分ほど固まったら皿を被せ、弱火にして1分待ちます。この余熱で表面が固まり、ひっくり返す時に皿にくっつくのを防げます。
ステップ6:仕上げ
ひっくり返してフライパンに戻します。
- しっかり派:弱火でじっくり焼きます。
- トロトロ派(ベタンソス風):強火で表面だけを焼き、中はパンを浸して食べられるほど半熟に仕上げます。
手間がかかりすぎる?
もし、じゃがいもを剥くのもフライパンを返すのも面倒だと思ったら、サンティアゴのセナリスに来てください。アントニオがじゃがいもを切り、私が厨房で腕を振るってお待ちしています。嘘偽りのない、本物のトルティーヤを用意しておきます。
私たちはスペイン人です。あなたも「第二の郷里」を見つけることができます。ぜひセナリスを訪ねてください。
心を込めて、ハンバーガーセリア・セナリスの厨房から